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第3回 arch紹介制倶楽部 花屋 cochon 和田 格さん×小畑 麻美さん 後編


後編では、和田さんと小畑さんのパーソナルな感覚やお花に対する姿勢について、また恒例のお互いへの質問も最後に伺いました!お二人のアティチュードはとても物腰柔らかで、常に人にもお花にも真摯に向き合われてる印象が真っ先に挙げられますが、内面に秘めている強さ、生命力が、ありのままにcochonのお花に分身のように伝わっているのだと感じられました。お花やあらゆる植物の持つチカラは、己の生命力に溢れ、そこにある数え切れない程の美しい色の世界はどんな世界よりも豊かで麗しいのかもしれません。

Flower modesty

W  花は生き物だから死に際ってすごく大事。花びらが落ちる瞬間とかっていうのは目にして欲しいなって思います。

O  是非ブーケを手に持って鏡を見て欲しいと思います。洋服のスタイリングと合わせてみたり、ベージュの色味の服に合わせたら?白だったらこうかな?とか...

ー cochonはバックグランドの異なる、和田さんと小畑さんのお二人で創り上げている世界観があると思うのですが、そんなお二人にとってのオススメしたいお花の嗜み方を教えて頂けますか?

O  ブーケを作った時に、和田がブーケを持って鏡を見に行くんですよ。鏡見るの好きなんだなって最初の頃は勝手に思ってたんですけど (笑) ただ私も真似してみようと思ってやってみたら、すごくイメージが湧きました。人が持った時の大きさや形、色合いや質感など客観的に見ることができます。なので、是非ブーケを手に持って鏡を見て欲しいと思います。その日の自分の服によって、ベージュの色味の服に合わせたら?白だったらこうかな?とか...

ー 自分だけの楽しみって特別ですよね。

W  素敵ですよね!

O  あとは是非、写真に収めたりして楽しんで頂きたいですね。今はスマホの写真の画質も綺麗ですし、Instagramなども簡単に記録として残しやすいという現代を謳歌してみてはいかがでしょうか。

W  あと、触るって大事で、例えば薔薇の茎はこんなかんじ、チューリップはこういうかんじなんだとか、手で覚えるというか、そういうのも面白いなって思う。なんか僕は美術館とか行ったら、触っちゃダメだけど、絵とか超触りたくなる。どういうザラザラ感なのかとか。でも花は自分で買ったものを触れるし、そういう楽しみ方も面白いんじゃないかなと思います。花自体は触りすぎると、ちょっと弱ったりとかするけど茎は大丈夫。朝コーヒー飲みながら、花の茎触るみたいな。この質感ね、みたいな (笑)

O  あと、お花ってやっぱり涼しいところの方が断然持ちますが、個人的には自宅に飾る時にはそこまでデリケートにならなくて良いんじゃないかなと思っています。例えば、冬に暖かいリビングにブーケを置いたら、お花はすぐに開いちゃうんですけど、ただここに飾りたいから飾る。もちろんお客様には涼しいところの方が持ちますよとお伝えしますが、ケースバイケースで全て無視するのもアリだと思います。

W  花は生き物だから死に際ってすごく大事。花びらが落ちる瞬間とかっていうのは目にして欲しいなって思います。家に帰って花があると本当に良いし、暖かいところに置いて早く咲いてしまっても、それはそれでブルジョワ的な楽しみだろうし。トイレに飾って花びらが散ったり、居間に飾って飯食いながら花を見ていた時に、花が散ったり。「花散ったよ!!オカン!花散ったよ!!」

O   (笑)

W  くらいなかんじで発見して欲しいなと。薔薇の死に際見たって人に自慢出来たりとか。

ー ははは (笑)

W  芍薬の死に際見たことある?とか。テーブルの上にパサって落ちる音が良いんだよね、とか。

一同  (笑)

O  ちょっと重いから、落ちる音も重いんですよ。バ、バサっみたいな。

W  ビールとか飲んでいる時に酔っ払ってきて、「お前薔薇の散り際見たことねーの?」ってなったら、男同士だと多分悔しいから、そいつは薔薇買いに行くと思います。そういうの良いなって思います。

ー それが連鎖したらお客さんが更に絶えないですね (笑)

W  あ。でも、うちは薔薇ないんです。

ー  (笑)

O  基本、薔薇は置いてないんです (笑) ご要望や市場で良い薔薇があった時に仕入れます。

ー 私自身、花の散り際を見た記憶はないのですが、幼い時に引っ越しする日に予定よりも1週間早く、幼稚園の庭に植えた真っ赤なチューリップが咲いてくれたことを思い出しました。

W  ほー!!なんか、記憶の話でいうと「覚えてること」ってあるじゃないですか。でもあれって誠だったのかなって思うんです。

ー それらは幻だったということですか?

W  なんか錯覚しちゃうんですよ。すごく覚えていることなのに、夢だったかもとか最近疑っちゃうんです。僕覚えているのが、小学校の時にサッカーやってたんですけど、コーチがラーメン奢ってくれるって言うから練習後にラーメン食いに行ったら、そこにいたおっちゃんが「お金降ってきてるよ!」って言ってきたんです。仲良かったメンバーで現地に行ったら、スーパーが潰れたらしくて屋上からお金投げてるんですよ。札とか小銭とか、あとお菓子とかも投げてた。多分俺一万円分くらい拾ったんですよ。全部拾ったのも鮮明に覚えてる。でも今考えるとこんなことってあるのかなって。でも現実なんですよ。

ー それは...誠の現実なんですか...。

W  だと思う、になっちゃってる。

ー でも、現実なんですね。

O  絶対嘘でしょ (笑)

W  でもこれは真実だったはずなのに、俺の錯覚かな、夢かな、とか記憶がこう... 潰れた会社がそんなことするかなとか...。

O  ゴダールじゃん!観すぎてるから (笑)

W  違う違う (笑) 特にお金投げるかなって思って。でも中華屋のくだりまで覚えててコーチの顔も覚えてるし、お金降ってきてるよっていうフレーズも覚えていて、お金拾って、やったね!みたいなかんじで友達と言い合ったのも覚えてる。

ー 町の人みんな来てお祭り騒ぎみたいなかんじですか (笑)

W  そう!そんなかんじだった!

ー ははは (笑)

W  今思うと有り得ないけど、すごく真実だと思うんだけど、なんか...そういう思い出が多いんですよね。

ー でも和田さんとしては、やっぱり現実なんですか?

W  現実なんだけど、今大人になって考えると、やっぱり嘘じゃねーかなって思っちゃう。だからさっきのチューリップの話を聞いて、それマジなのって思っちゃったんですよね。

ー 幼い頃の思い出って、実際のところわからないですよね。

W  そう!わかんないじゃん!すげーうろ覚えで。

ー でも、すみません、さっきの話は (笑) 信じてないわけではないんですが (笑)

W  そういうかんじです。

O  ははは (笑)

ー 現実だとしたら面白い記憶ですね。

O  面白い。

W  現実だと思うんだけど。錯覚してる、色々。

ー もしかしたら、どこかで脚色されている部分があるかもしれないですね。

W  こういう世の中で生きてたらさ、何が起こったのかなんかもうわからないですよね。

ー なんか深いところまできましたね (笑)

O   ははは (笑)

W  どこかで、脳みそやられた時があるんじゃないかなとか。その得体の知れない何かによって。なんか洗脳にあったとか、有りえるなって思って。

ー 記憶がブツ切れになってる可能性もあるってことですよね。

W  もちろんさ、やられた瞬間はその記憶は消すわけだから、洗脳された瞬間は覚えてないわけですし。

ー でもお札と小銭とお菓子が降ってくるってなかなかですよね (笑) ちなみにお金拾った後は覚えてないんですか?

W  多分、帰ってお菓子食べた。でもその後は覚えてない。

ー ちょっとこれは怪しいですね。

O  怪しい (笑)

W  でもさ、記憶ってそんなもんじゃないですか。例えば引越しの時は鮮明に覚えているけど、引越してその後に何したかは覚えてなかったり...ってことは覚えている記憶でさえも、すげー脚色した可能性あるよねみたいな。

Questions to one another

W  やっぱり僕は同じものを作るより変化していきたい。それは変化してたいった奴らがカッコいいから。ゴダールの姿を観ていたから。

O  常に寄り添う感覚。「お花が好き」というよりも「生き物」としての意識を向けています。我が子みたいです。

ー ではお互いにひとつずつ、質問をお願いします。

O  いつも真剣にお花に向き合う和田のフローリストとしての抱負、自分のなりたいものがあれば聞いてみたいです。

W  人間出来ないことはないって思うけど、ミケランジェロみたいに圧倒的な天才はいるわけですよね。だからそういう人にはなれないけど、豊かに生きていくこと、楽しむことが大事だと思う。この世界は美しいとは思ってなくて、すごくひどい世界だなって思うんですよ。でも落語を聴いたりすると、その世界観は本当に面白くて豊かですごくユートピアだなって思っているんです。生きている理由ってマジでないけど、死ぬ勇気もなくて生きている。そうしてアートや音楽、花や人に出会ったりしている。その中で人と出会うことが第一条件で、人と出会っているからこそ生きていこうと思うし、僕らが仕事として出来ることは出会った人たちに喜んでもらえるブーケを作ったり、楽しむことが人と仲良くしていくことの秘訣だと思っています。一緒に美味しいもの食べたり、不味いお酒飲んだりしてコミュニケーションをとって人は成長していくし... だから背伸びせず、自分の周りの人と意見交換しながら自分たちのスタイルを見つけていく。地道に一個ずつやっていけばいろんな注文が入ってきて、良い花屋になるんじゃないでしょうか...ってかんじです。

O  ありがとうございます! この前、お店に来て下さった知り合いの方とコンセプトについて話していたんですが、お店では話がまとまらず (笑) 居酒屋に移動してお酒片手に談義したのを思い出しました。

W  僕はコンセプトってマジで嘘だなって思ってて。だって、移り変わっていくものだし「今のコンセプトはこうです!」ってよくもそんな嘘がつけるなって正直思うんですよ。でも仕事を取っていく上で自分たちのこと伝えるのは大事なことでもある。ただ、そういう言葉に頼らずに、感性だけでお互いの仕事が出来ること程、素晴らしいことはないとも思うんです。例えばコンセプトって、それ以上を目指したらコンセプトは一気に崩れて自由な表現になる。でも自由な表現程、言葉にした時点でやりたいことからはイメージが一気に離れるし、本当はもっと美しい表現がこの花たちにも出来たかもしれないのに、デッサンに起こしたが故にその形になってしまったと。常に作る側は進化して良いものを作らなければならないし、満足していたらダメ。やっぱり僕は同じものを作るより変化していきたい。それはすごく男的な考えで、変化してたいった奴らがカッコいいから。ゴダールの姿を観ていたから。そういう男を目指したいなって思ってるので、コンセプト決めにかかってる人を見ると、この嘘つき野郎が!って思うんです。

ー  (笑)

O   (笑)

W  でも、そういう人の方が絶対強いんですよ。コンセプト社会だから。はい、じゃあ質問良いですか?

O  はい!どうぞ。

W  花は好きになりましたか?

O  「お花が好き」というよりも「生き物」としての意識を向けています。以前は単純に、お花って綺麗だな、可愛いなと思っていましたが、今は生き物的な感覚で見ていて、例えばお花の水を替えるのも濁り具合が気になりますし、観葉植物であれば水をすごく欲しがる植物もあれば、乾燥気味で良い植物があったり。やっぱり生き物なので常に寄り添う感覚です。仲間というか従業員というか (笑) いつもベストコンディションでいてほしいので。我が子ですね (笑)

W  良いんじゃないですか!!

O   (笑)

ー では最後に明日の予定を。

W  明日は売り込みですね!お店は開いてます。今後についていろいろ話し合うかんじですかね。

O  ですね!

<profile> cochon / Instagram @cochon.nuageux

2016年スタート。花は一本一本、生きていて、生命力に溢れています。その1本1本を束ねていき、ブーケができる。そんな生命力の塊は可能性に満ち満ちています。その可能性というものを日々探求しています。その探求が人々の手にいき、そこで会話が生まれる事を願っています。

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